東京地方裁判所 平成4年(特わ)2145号 判決 1993年4月23日
本籍
富山県高岡市白金町三九番地
住居
東京都墨田区菊川三丁目六番六-一〇〇四号菊川ホームズ
飲食店経営
懸高義信
昭和二二年五月三一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官鈴木亨、弁護人今井重男、同松井勝各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都江東区猿江二丁目三番二〇-三〇六号に居住し、同都台東区浅草一丁目一二番二号において「ダンスパブヤマト」の名称で風俗営業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和六二年分の実際総所得金額が三二二四万三五一九円(別紙一の1の所得金額総括表及び修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同六三年三月一五日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号所轄江東西税務署において、同税務署長に対し、同六二年分の総所得金額が八五〇万二三四七円で、これに対する所得税額が一三五万五六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一一八四万三三〇〇円と右申告税額との差額一〇四八万七七〇〇円(別紙二の1の脱税額計算書のとおり)を免れ
第二 昭和六三年分の実際総所得金額が八六九二万一二九八円(別紙一の2の所得金額総括表及び修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、平成元年三月一五日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額が八一八万四三二四円で、これに対する所得税額が一二六万四八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四一四七万一八〇〇円と右申告税額との差額四〇二〇万七〇〇〇円(別紙二の2の脱税額計算書のとおり)を免れ
第三 平成元年分の実際総所得金額が六六九七万六二八四円(別紙一の3の所得金額総括表及び修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同二年三月一五日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、同元年分の総所得金額が九五三万〇八八九円で、これに対する所得税額が一六四万一九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二九〇五万九五〇〇円と右申告税額との差額二七四一万七六〇〇円(別紙二3の脱税額計算書のとおり)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書
一 井戸利夫、神阪文治、高橋清の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の売上調査書(検甲一)
一 大蔵事務官作成の仕入調査書(検甲二)
一 大蔵事務官作成の租税公課調査書(検甲三)
一 大蔵事務官作成の水道光熱費調査書(検甲四)
一 大蔵事務官作成の通信費調査書(検甲五)
一 大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書(検甲六)
一 大蔵事務官作成の接待交際費調査書(検甲七)
一 大蔵事務官作成の修繕費調査書(検甲八)
一 大蔵事務官作成の減価償却費調査書(検甲九)
一 大蔵事務官作成の福利厚生費調査書(検甲一〇)
一 大蔵事務官作成の給料賃金調査書(検甲一一)
一 大蔵事務官作成の地代家賃調査書(検甲一三)
一 大蔵事務官作成の支払手数料調査書(検甲一四)
一 大蔵事務官作成の諸会費調査書(検甲一五)
一 大蔵事務官作成の賃借料調査書(検甲一六)
一 大蔵事務官作成の保証金償却調査書(検甲一七)
一 大蔵事務官作成の雑費調査書(検甲一八)
一 大蔵事務官作成の出演料調査書(検甲一九)
一 大蔵事務官作成の衣装費調査書(検甲二〇)
一 大蔵事務官作成の燃料費調査書(検甲二一)
一 大蔵事務官作成の事務費調査書(検甲二二)
一 大蔵事務官作成の青色申告控除調査書(検甲二四)
一 大蔵事務官作成の領置てん末書(検甲三九)
判示第一、第二の各事実につき
一 大蔵事務官作成の利子割引料調査書(検甲一二)
一 大蔵事務官作成の医療費控除調査書(検甲二七)
一 検察事務官作成の捜査報告書(検甲四一)
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の利子収入調査書(検甲二六)
一 大蔵事務官作成の源泉徴収税額調査書(検甲二八)
一 検察事務官作成の捜査報告書(検甲四〇)
一 押収してある所得税確定申告書(昭和六二年分)一袋(平成五年押第一八五号の1)、所得税青色申告決算書(昭和六二年分)一袋(同号の4)
判示第二の事実につき
一 押収してある所得税確定申告書(昭和六三年分)一袋(同号の2)、所得税青色申告決算書(昭和六三年分)一袋(同号の5)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の固定資産除却損調査書(検甲二三)
一 大蔵事務官作成の計算誤謬調査書(検甲二五)
一 押収してある所得税確定申告書(平成元年分)一袋(同号の3)、所得税青色申告決算書(平成元年分)一袋(同号の6)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金二、〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって主文のとおり判決する。
(求刑・懲役一年及び罰金二五〇〇万円)
(裁判官 伊藤正髙)
別紙一の1
所得金額総括表
<省略>
修正損益計算書
<省略>
別紙一の2
所得金額総括表
<省略>
修正損益計算書
<省略>
別紙一の3
所得金額総括表
<省略>
修正損益計算書
<省略>
別紙二
脱税額計算書
1 昭和62年分
<省略>
2 昭和63年分
<省略>
3 平成元年分
<省略>